築土つくど)” の例文
もう一つ、奧方は昨日確かに築土つくど八幡樣へお詣りに行つて、お神籤みくじを引いて居ますよ。あの通り目に立つ人で、多勢が見てゐます。
二人は大曲おおまがりで下りた後江戸川端から足の向く方の横町へとぶらぶら曲って行ったが、する中にいつか築土つくど明神下の広い通へ出た。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それがし事は西国の武士、築土つくど新吾と申すもの、突然参上無礼の段は、特にご容赦ようしゃにあずかると致し、早速ながら申し入れます。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
去年の暮れに一しょになって、築土つくどまんに家を持ってやれよかったと思う間もなく、ついに自分が我慢がまんし切れずに、あんな出来事が起ったのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
土手の松へは夜鷹よたかが来る。築土つくどの森では木兎ずくが鳴く。……折から宵月よいづきの頃であった。親雀は、可恐おそろしいものの目に触れないように、なるたけ、葉の暗い中に隠したに違いない。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
築土つくどの八幡だの市谷いちがやの八幡だのの、仮の氏子になってから出かけたということであります。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そして築土つくど八幡樣へお廻りになつて、お神籤みくじをお引きになつた、お神簸は吉であつたのに、凶であつたと仰しやいました。
これから真っ直ぐに築土つくどまんへ廻って、何か口実を作って、琴二郎に会ってみようか——それとも、もうすこし日和ひよりを見ようか——坊主頭を頭巾ずきんに包んで
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
拙者は築土つくど新吾といい、袴氏とは年来の懇意、先ほどよりして河喜の二階で、広太郎殿と飲食中、ふとご令嬢のお通りを見かけ、広太郎殿の申すには、小松原家のご令嬢、お京様が通られる。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「奧樣が築土つくど八幡樣へお詣りに行つただけです——え、昨日でしたか、御神籤おみくじを引いたらきようが出たとかで、ひどくしをれてゐらつしやいましたした」
築土つくど八幡の家からは喬之助妻園絵をはじめ、弟の琴二郎まで召捕めしとられてしらべを受けている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)