筆札ひっさつ)” の例文
五百の師としてつかえた人には、経学に佐藤一斎、筆札ひっさつ生方鼎斎うぶかたていさい、絵画に谷文晁、和歌に前田夏蔭まえだなつかげがあるそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
帝曰く、これちんが家事なり、先生はなはだ労苦するなかれと。左右をして筆札ひっさつを授けしめて、おもむろにみことのりして曰く、天下に詔する、先生にあらずんば不可なりと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
筆札ひっさつに志あるお銀様が見ても、心憎いほどの筆づかいであったのは、それは名家の筆蹟を憎むのではない、どうやらこの文字のぬしが、やっぱり女であると思われることから
原来がんらい平井氏は善書ぜんしょの家である。祖父峩斎がさいはかつて筆札ひっさつ高頤斎こういさいに受けて、その書が一時に行われたこともある。峩斎、通称は仙右衛門せんえもん、その子を仙蔵せんぞうという。のち父の称をぐ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この年十月十八日に成善が筆札ひっさつの師小島成斎が六十七歳で歿した。成斎は朝生徒に習字を教えて、ついで阿部家のやかたに出仕し、午時ごじ公退して酒を飲み劇を談ずることを例としていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)