笞刑ちけい)” の例文
その一に「密通」の禁があって、それを犯した者は死ぬまでの笞刑ちけいに処された。罪人の子孫を殖やさないため、特に重刑を科したらしい。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
十字架はローマの法律による極刑であり、これに処する犯人に対しては、十字架につける前に、付加刑として笞刑ちけいを加える定めであった。
この大旅行の突発性や無根拠さは、さらに事後の彼を見れば益〻ますますはっきりする。なるほど彼は笞刑ちけいの現場を見て幾晩か眠れなかったと告白する。
笞刑ちけいを受けている囚人のような声で、切れ切れに云う美沢の言葉には、言外の意味も含まれていて、新子はギョッとした。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その差入物でも牢番に半分以上取られてしまって、自分の喰うのはごく僅かになってしまうそうです。刑罰の一番優しいのが罰金、笞刑ちけい、それから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
音楽上のユダヤ人らは、はずかしめの衣裳を着せられた後にそのすがたを焼かれていた。巨人ヘンデルも笞刑ちけいを受けていた。
わたしなんぞもそれ程まで踏み込んだ考を持っているわけではありませんよ。先頃もフランスで誰やらが、英国の笞刑ちけいが好結果を奏していると新聞に書いた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
すべてこの笞刑ちけいの後で流刑に処するというやり方は、けっして人を匡正きょうせいすることはできませんじゃ。
即ち現行盗の犯人は、もし自由人ならば笞刑ちけいに処したち被害者に引渡してその奴隷となし(いわゆる身位喪失の刑)、奴隷ならば先ずむちうった後ちこれを死刑に処する。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
おびただしいこの笞刑ちけいの痕が、長い流期の象徴になっていた。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
力に委せて武道者は、笞刑ちけいを美少年に試みようとした。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
それから裁判だ、徒刑だ、笞刑ちけいだ……。
追放されて (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たとえば五十の笞刑ちけいという判決であれば、カッツァーンがこれに従って被告をば会堂の中で五十むち打ったのです。
僕はまた、それをまじめなことだと思って、教会はこれから刑事事件を裁判して、笞刑ちけい流刑るけいや、悪くすると死刑の宣告さえするようになるのじゃないかと考えたんですよ
笞刑ちけいなどは、当時は、現代の執行猶予くらいの恩典だった。
奉行と人相学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
十字架の判決を受けた者には、付加刑として三十ないし四十の笞刑ちけいが加えられる定めであった。ピラトはイエスに笞刑を加えた後、十字架刑の執行者である兵卒どもにイエスの身を渡した。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)