竜田姫たつたひめ)” の例文
其の火は朝露あさつゆ晃々きらきらと、霧を払つて、満山まんざんに映つた、松明は竜田姫たつたひめが、くてにしきむる、燃ゆるが如き絵の具であらう。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
竜田姫たつたひめのうっとりと眼をほそくし、またぱっと目をみひらく様な、曇りつ照りつ寂しい暮秋の日。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お珊が黙って、此方こなたから差覗さしのぞいて立ったのは、竜田姫たつたひめたたずんで、霜葉もみじの錦の谿たに深く、夕映えたるを望める光景ありさま。居たのが立って、入ったのと、奴二人の、同じ八尺対扮装ついでたち
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海底の琅玕の宮殿に、宝蔵の珠玉金銀が、にじに透いて見えるのに、更科さらしなの秋の月、にしきを染めた木曾の山々は劣りはしない。……峰には、その錦葉もみじを織る竜田姫たつたひめがおいでなんだ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)