穢土ゑど)” の例文
就いては今日より心を改め、天主のおん教へを守らせ候へ。もし又さもなく候はば、みなみな生害のともを仕り、われらと共に穢土ゑどを去り候へ。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は天災地變にさいなまれる人生の焦熱地獄に堪へられなくなつて、この假現の濁世ぢよくせ穢土ゑどからのがれようとしたのです。そして解脱げだつしようとしたのです。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さるに數奇失意の人は造化を怨み、自然を憤りて、此世を穢土ゑどのゝしり、苦界とそしるなり。さて亦得意の人はこれに反して造化を情深き慈母のやうにおもひて、此世を樂園とおもへり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あはれ無垢むくなる少女の生活を穢土ゑどにくらし過ごすことの何とも心往かず、田舍より出でし初め、藤色絞りの半襟を袷にかけ着て歩るきしを、田舍もの田舍ものと笑はれしを口惜しがりて
いはんや沈痛凄惻人生を穢土ゑどなりとのみ観ずる厭世家の境界に於てをや。いづくんぞ恋愛なる牙城にる事の多からざるを得んや、曷んぞ恋愛なる者を其実物よりも重大して見る事なきを得んや。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
可惜あたら舟を出して彼岸に到り得ず、憂くも道に迷ひて穢土ゑどに復還るに至る。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
きたない小蟲が燒地やけち穢土ゑどにむらがつてゐる。
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
むさぼるものにこの穢土ゑど
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
きたない小蟲が燒地やけち穢土ゑどにむらがつてゐる。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)