稽古着けいこぎ)” の例文
奉行職ぶぎょうしょく記録所きろくじょの役部屋へ、小野十太夫じゅうだゆうがはいって来る。彼は汗になった稽古着けいこぎのままで、ときには竹刀しないを持ったままのこともある。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「家の方は私の稽古着けいこぎを売ってもよいから」といって、親子のあぶらであり、血となるだいの金四円を、母を車に乗せて夜中ではあれど届けさせた。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いま立合をして負けた方のが、道場から母屋おもやへつづいた廊下をスタスタと稽古着けいこぎはかまのままで出てゆくと
丁度日の暮方くれがた、北割下水へ通り掛りますと、向うの岸が黒山のような人立で、剣客者けんかくしゃの内弟子らしい、はかまをたくしあげ稽古着けいこぎを着て、泡雪あわゆき杓子しゃくしを見た様な頭をした者が
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ブルは牛みたいなからだに、拳闘けんとうのしたくをかためて、堂々とあらわれた。ぼくは背広服せびろふく上着うわぎをぬいだきりだ。柔道じゅうどう稽古着けいこぎも持ってないし、わざと平気な顔をして出ていくと
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)