移転ひっこ)” の例文
旧字:移轉
或る人が来て、景色の好い上に馬鹿に安い地所があるから移転ひっこさないかと云うから、何処かと聞くと、市外五里の辺鄙な田舎いなかである。
駆逐されんとする文人 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかも、泡鳴が清子を訪れたのは十二月の一日がはじめてで、十日にはもう大久保おおくぼ移転ひっこしている。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
一軒隣りの荒物屋のお神さんが移転ひっこすのを考えているというのも無理はないと思った。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
親分も大層悦んで仕事をよこしてくれやしたが、先の家じゃア狭くって仕事が出来ねえから、今日此処へ移転ひっこして来て、蕎麦を配るからどうか旦那にお初うを上げたいと思っていたが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして、二月末には、信長はもう岐阜を引き払って、移転ひっこして来た。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「時々お目にはかかろうも知れぬ。私はご隣家へ移転ひっこすからの」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
久しぶりで全家うちじゅうそろいは珍らしいというと、昨日きのう同番地へ移転ひっこして来たといった。ツイそこの酒屋の裏だというから段々くと、近頃まで何とかいう女医が住んでいた家だ。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
どこか遠国とおく移転ひっこすふりや。知らぬ処の病院さして。入れに行く振り人には見せて。又と帰らぬ野山の涯へ。泣きの涙で患者を棄てます。なれどコイツは捨児すてごと違うて。拾い育てる仏は居ませぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
移転ひっこして来たのであろう。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あのうちとはお医者さんで、移転ひっこしたてに家のへいかどへ看板を出さしてくれとタウルを半ダース持って頼みに来た、」というと、「そんなら僕も看板を出さしてもらおうかナ」といった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
百人町ひゃくにんちょう移転ひっこしてから家が遠くなったので自然足が遠のいた。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)