破納屋やれなや)” の例文
清水から一坂上り口に、まき、漬ものおけ石臼いしうすなんどを投遣なげやりにした物置の破納屋やれなやが、炭焼小屋に見えるまで、あたりはしずかに、人の往来ゆききはまるでない。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おんなはちょうどかけひの水に、嫁菜の茎を手すさびに浸していた。浅葱あさぎしずくする花をたてに、破納屋やれなや上路のぼりみちを指して
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に青空に霧をかけた釣鐘が、たちまち黒く頭上を蔽うて、破納屋やれなやの石臼もまなこが窪み口が欠けて髑髏しゃりこうべのように見え、曼珠沙華まんじゅしゃげも鬼火に燃えて、四辺あたり真暗まっくらになったのは、めくるめく心地がしたからである。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)