研出とぎだ)” の例文
中折なかおれの帽子を目深まぶかに、洋服の上へ着込んだ外套の色の、黒いがちらちらとするばかり、しッくい叩きの土間も、研出とぎだしたような沓脱石くつぬぎいしも、一面に雪紛々。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紫のしずかな色の上に、一箇の蒔絵まきえ印籠が乗っていた。葵紋をちらした研出とぎだし蒔絵の金色が、見る眼を射た。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
市井のそこに住む人等ひとたちあふらと汗とが浸潤しんじゆんしてか、地は、陰濕じめ/″\してどす黒い………其のどす黒い地べたに、ぽツつり/\、白くしやれた貝殼かひがらが恰で研出とぎだされたやうになツてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「漆で塗ったようだ、ぼっと霧のかかった処は研出とぎだしだね。」
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)