眼瞬まばた)” の例文
朝子は同じ小テーブルの向い側にぼんやり見ていた素子の物を書いている頭のところへ、改めて我が目を据え直したという眼瞬まばたきかたをした。
広場 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
殊に何よりも辛かつたのは眼瞬まばたきの出来ないことで、こんな切ない思ひをするなら、いっそほんとに死んだ方がしであつた
そう云ううちに一知は興奮したらしく早口になりかけたが、忽ちサッと青くなって口籠った。云うのじゃなかった……といった風に唇をギュッと噛んで、忙しく眼瞬まばたきをした。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これは人間でもそうであるが凡ゆる動物はみんなうらしい、鳥の眼瞬まばたきほど美しいものはないが、懸巣の眼瞬きは迅くてぴりぴりした神経的なものであって、何とも言えぬ美しさを持っている。
人真似鳥 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
葬式彦兵衛は二つ三つ続けさまに眼瞬まばたきをした。
そして道阿弥は、犬が主人の顔色をうかゞうように河内介を見上げながら、パチパチと続けざまに眼瞬まばたきをした。
野田は沼倉に指さゝれた瞬間、はっと驚いたような眼瞬まばたきをして、憐れみを乞うが如くに相手の眼の色を恐る/\窺って居たが、やがて何事をか決心したように、真青な顔をして立ち上ると
小さな王国 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)