看取かんしゆ)” の例文
さう云へば遺書の文字さへ、鄭板橋ていはんけう風の奔放な字で、その淋漓りんりたる墨痕ぼくこんの中にも、彼の風貌が看取かんしゆされない事もない。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かゝる場合に看取かんしゆせられる壮観は、丁度ちやうど軍隊の整列しくは舞台に於ける並大名ならびだいみやうを見る時と同様で一つ/\に離して見れば極めて平凡なものも集合して一団をなす時には
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これは又現世の用語を使へば、「人生的」と呼ばれる作品の一つ、——「憐れな男」にさへ看取かんしゆ出来るであらう。
定めし少女も小生と同様、桜の花や花崗岩みかげいししほしたたる海藻をおもひ居りしことと存じ候。これは決して臆測おくそくには無之これなく、少女の顔を一瞥いちべつ致し候はば、誰にも看取かんしゆ出来ることに御座候。
伊東から (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)