相輪そうりん)” の例文
ときどき塔の相輪そうりんを見上げて、その水煙すいえんのなかにかしぼりになって一人の天女の飛翔ひしょうしつつある姿を、どうしたら一番よく捉まえられるだろうかと角度など工夫してみていた。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
小手をかざして塔の上の方を見上みあげるならば、五重塔の天辺てっぺん緑青ろくしょうのふいた相輪そうりんの根元に、青色の角袖かくそでの半合羽を着た儒者の質流れのような人物が、左の腕を九りんに絡みつけ
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
わたくしたちは金堂と東院堂との間の草原に立って、双眼鏡でこの塔の相輪そうりんを見上げた。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
堂に法華ほっけと云い、石に仏足ぶっそくと云い、とう相輪そうりんと云い、院に浄土と云うも、ただ名と年と歴史をして吾事わがことおわると思うはしかばねいだいて活ける人を髣髴ほうふつするようなものである。見るは名あるがためではない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)