相踵あいつ)” の例文
後に夫となるべき抽斎は五百が本丸にいた間、尾島氏さだを妻とし、藤堂家にいた間、比良野氏威能いの、岡西氏とく相踵あいついで妻としていたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それからもう一つには、この年に相踵あいついで起った色々の災害レビューの終幕における花形として出現したために、その「災害価値」が一層高められたようである。
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
昨年の秋あたりから、江戸の本草学者が神隠しに逢ったように、相踵あいついで行方不明になっております。
だが、戦死の報は、頻々ひんぴんとして相踵あいついだ。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
抽斎のあらわす所の書には、先ず『経籍訪古志』と『留真譜りゅうしんふ』とがあって、相踵あいついで支那人の手にって刊行せられた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのレコードが日本ビクターにも相踵あいついでプレスされ、旧吹込盤と比較して、是非の論はしばらくの間レコード界を賑わしたことも、大方の記憶に新たなるものがあるだろう。
三五郎という前髪と、その兄分の鉢鬢奴ばちびんやっことの間の恋の歴史であって、嫉妬しっとがある。鞘当さやあてがある。末段には二人が相踵あいついで戦死することになっていたかと思う。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
とにかく、ブルメスターの手堅い、典雅な演奏は、相踵あいついで日本を訪ねたアウアー門下の提琴家たちの派手な華麗な演奏に飽き足らない人たちを喜ばせたことは一通りでなかった。
主人市兵衛と番頭の清七は遠島になった上相踵あいついで死に、内儀と娘のお茂はいちど草加に隠れましたが母親が死んだ後のお茂は、お上の御目こぼしを幸い江戸に流れ込み、やくざ者の利八や
天保十二年の頃には竜池、香以の父子が相踵あいついでクリジスに遭ったらしい。子之助とその姉とを生んだ竜池の妻はこの頃離縁になった。子之助の姉は外桜田堀通の上杉弾正大弼斉憲うえすぎだんじょうのたいひつなりのりの奥に仕えていた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)