目交めま)” の例文
「新吉や」と、手代の方へ目交めまぜをして——「お前も早くこッちへ体を隠したがよい。そんな所に坐っていると、また外から見えるじゃないか」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、少し横にすねたような行灯あんどんのみえる小料理屋の門の前に止まると、新兵衛は、あごをしゃくるようにして目交めまぜをし乍ら、さっさと中へ這入はいっていった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
森の中の灯は醉ひにかすんだ美しい女の眼のやうに、おぼろな花の間に華やかな光りと光りを目交めまぜしてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
目交めまぜで、クスリと笑っていると、理平は、新聞に眼を突かれたように、ガチリと、珈琲茶碗をおいて
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四人はじりじりとうしろに体を引きながら、互に何か目交めまぜでしめし合わせていましたが、合図が通じたものか、そのとき恐れ気もなくのこのこと間に割って這入って来たのは
顔から顔へ名を呼ぶように目交めまぜが飛ぶと、近侍達は一斉にかたわらの脇差をにぎりしめた。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
稲吉は目交めまぜで立って、つかつかと連中の前へ行き、み手をしながら
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あわてて新兵衛は、目交めまぜで止め乍ら、まだなにか言いたそうに、もじもじとしていたが、平七の顔いろをうかがい窺い、女を隣りの部屋へつれて行くと、小声でひそひそとなにかささやいた。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
目交めまぜで別れて、秦野屋は風のごとく馳け去りました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
互いに目交めまぜをしつつ、再び退屈男のあとをつけ始めました。