盗泉とうせん)” の例文
旧字:盜泉
坐ってはしをとったものの、成信はちょっとそこで躊躇ちゅうちょした。つまらないようなはなしだが、かっしても盗泉とうせんの水をのまずということが頭にうかんだのである。
泥棒と若殿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
盗賊の物を飲んだり食ったりするのは厭だ、かっしても盗泉とうせんの水を飲まず、其のくらいの事は山三郎存じて居ります、其方そちらで勝手にお飲みなさい、わしは釣にきますとき
元より衣食のみちはつかず、というて、身寄り頼りにすがって、さもしい頭も下げきれず、また、かっしても盗泉とうせんの水はくらわず——と頑固に持して、一同、この街道の橋袂はしたもとに、貧しい納屋なや一軒借りうけ
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かっしても盗泉とうせんの水を飲まず位の事は心得ているではないか、何ういう訳で人の物をる気になった、手前とは知らずナ、此の角右衞門が旅人たびゞとを助けようとして打留めたのであるぞ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)