白髭しらひげ)” の例文
ぽつり、ぽつり、ぽつりと、奉迎門の明るい電光飾に、三人の褞袍着どてらぎの姿が埠頭はとばの広場に現れる。中の一人は白髪はくはつ白髭しらひげである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
隅田川すみだがわも見えはすまいかと、昔住んだ土地がなつかしくて見廻しました。綾瀬を越して行くと向島むこうじまの土手になって、梅若うめわか白髭しらひげの辺に出るのです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
歳のゆかん娘気むすめぎに思い違いを致し、一層いっそ尼にでも成ろうと心を決し不図家出を致しましたが、向島の白髭しらひげそば蟠竜軒ばんりゅうけんという尼寺がございます、こゝへ駈込んで参りましたが
雪はんだ。裸虫はだかむし甲羅こうらを干すという日和ひよりも日曜ではないので、男湯にはただ一人生花いけばなの師匠とでもいうような白髭しらひげの隠居が帯を解いているばかり。番台の上にはいつも見るばばあも小娘もいない。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
白髭しらひげを胸にたれて、いつもニコニコしていらっしゃる、一太郎君のお祖父じいさん、頭を坊主がりにして、口髭のりっぱなお父さん、そのとなりにはお母さんと、それからお母さんのお膝にもたれて
智恵の一太郎 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
向島白髭しらひげの、大川にのぞんだ二十畳ばかりの広座敷。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
大抵は近くの子たちですが、渡しを越して来るのも少しはあったようでした。花の咲いている間に、一、二度位は白髭しらひげ梅若うめわか辺まで行って見ます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「月を待乳の山に望み、風白髭しらひげの森を渡る」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)