白蓮華びゃくれんげ)” の例文
とその蹴出しの下に脱いで揃えた白足袋が、蓮……蓮には済まないが、思うまま言わして下さい。……白蓮華びゃくれんげつぼみのように見えました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
死刑囚の口には、一対の白蓮華びゃくれんげ白団子しろだんごが供えてあり、裸馬から下ろされた宋江、戴宗ふたりはただちに、死のむしろへひきすえられたが、時刻のうまノ刻にはちと早い。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白蓮華びゃくれんげ……とでも申しましょうか、この白さの深いこと、可愛いじゃありませんか。この十坪ばかりのところは、すっかり桜草の一族で固めて、他人を入れまいとしておりますよ。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
紅蓮こうれん一茎ひとえだ白蓮華びゃくれんげの咲いた枯田かれたのへりに、何の草か、幻の露の秋草のあぜを前にして、崖の大巌おおいわに抱かれたように、巌窟いわむろこもったように、悄乎しょんぼりと一人、淡くたたずんだおんなを見ました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にしきとばり翠藍すいらんうちに、銀の皿の燈明は、天地の一白に凝って、紫の油、朱燈心、火尖ほさき金色こんじきの光を放って、三つ二つひらひらと動く時、大池の波は、さながら白蓮華びゃくれんげを競って咲いた。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)