なお)” の例文
風や水が何万年か経って岩石に巨人像を刻み込むように、この像にも鎖されていた三年のうちに、傴僂せむしなおしてしまったものがあったのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
三度も手術を受けて、そしてまだいつなおる見込みもつかない。私はこらえるには怺えます。けれども悲しいのはかなしい。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
いったいに赤児に注射するときでも、女はそれを平気な顔で眺め、こうすればなおるものだと信じているらしかった。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「はい、ここらのものは病気になるとみんな先生のおうちの床下にはいってなおすのでございます。」
セロ弾きのゴーシュ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それに病人をなおすと云っても、薬一服盛るのでもなし、荒神の護符を飲ませるのでもない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これなら頭もしばらくすれば必ずなおるであろうと喜んだ。
馬車 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「それだから君は、僕が先刻さっき傴僂せむしなおっていると云ったら、わらったのだよ。自然がどうして、人間の眼に止まる所になんぞ、跡を残して置くもんか」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あるとき嘉十は、くりの木から落ちて、少し左のひざを悪くしました。そんなときみんなはいつでも、西の山の中の湯のくとこへ行って、小屋をかけてとまってなおすのでした。
鹿踊りのはじまり (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
オヤオヤ、この傴僂はなおっているんだぜ。不思議な暗合じゃないか。扉の浮彫では耶蘇に治療を
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)