痴話ちわ)” の例文
「……だんなえ。今、どすんといったのは、なんの音ですかえ。夜が明けてまで、痴話ちわ喧嘩のつづきじゃしようがありませんね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外記と馴染みそめたその当座は、自分たちの間にもそうしたおさない他愛ない痴話ちわ口説くぜつの繰り返されたことを思い出して、三年前の自分がそぞろに懐かしくなった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小石川の切支丹屋敷きりしたんやしきに近い御家人崩れの福村の家では、福兄ふくにいとお絹とが、さしむかっての痴話ちわ
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「へエ、それはその通りですが、痴話ちわ喧嘩といふこともないぢやございません」
ちょっと痴話ちわ喧嘩というところ……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その上の痴話ちわが何かにこじれて、武蔵が女を振切って去ったので、お通阿女あまは泣き声をしぼって男を呼び返しているのだろう。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
根っから詰らねえ痴話ちわでたあいもねえ、それは冗談でございますが先生、こんなことも他生たしょうの縁とやらでございましょうから、これからわっしどもも先生と御新造のおともをして
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
又十郎は、頬杖ついて、お駒と向い合って痴話ちわでもしているように、お駒の表情や云い草までを、空想していた。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんなことから痴話ちわこうじてゆきました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ふたりが痴話ちわけているまン中の部屋で、ひとりちょかいみたいな寝相ねぞうをして、朝の鏡に目をこすり「わるい悪戯いたずらをしやあがる」と顔の墨汁すみをあらい落して怒らぬところもあった男だ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)