痲疹はしか)” の例文
そして朝鮮にはこの空葬が現今でも残っていて、疱瘡と痲疹はしかで死んだ子供は空葬にせぬと他に伝染するとて、迷信的にこれを行うている。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
街道では痲疹はしかの神を送ったあとで、あちこちに病人や死亡者を出した流行病のわずらいから、みんなようやく一息ついたところだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
菊太郎君も重かったそうだが、これは自分で仕出来しでかしたのだから仕方がない。それから四つの時に痲疹はしかをやった。これも菊太郎君のが移ったのである。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
年代にすると、黒船が浦賀うらがの港をさわがせた嘉永かえいの末年にでも当りますか——その母親の弟になる、茂作もさくと云う八ツばかりの男の子が、重い痲疹はしかかかりました。
黒衣聖母 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、長崎渡りの珍菓としてでられた軽焼があまねく世間に広がったは疱瘡ほうそう痲疹はしかの流行が原因していた。
そしてたしかお遊さんが二十七のとしに亡くなった夫のわすれがたみのはじめという痲疹はしかから肺炎になりまして病死いたしましたのでこの子供の死にましたことがお遊さんの身のうえにも引いては父のいっしょうにもひびいてまいったのでござります。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「まあ/\、気を長く待つんだね。君は一遍人生の痲疹はしかをやって、もう悟りを開いていると言ったじゃないか?」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
江戸表から、大坂、京都は言うに及ばず、日本国じゅうにあの悪性の痲疹はしかが流行して、全快しても種々な病に変わり、諸方に死人のできたこともおびただしい数に上った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
人間は一遍しか恋をし得ないという諺が西洋にある。恋は痲疹はしかなりとも言う。その反対に幾度もする奴があるけれど、僕は矢張り番数ばんかずかない組だろう。
妻の秘密筥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
痲疹はしかを三人一度にやったこともある。ジフテリヤもやった。何でも一人で済むことは滅多にない。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それはね、君と僕とは少し違うんだよ。僕はもう悟りを開いている。君、恋愛は痲疹はしかだよ」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と悌四郎君はその実例として、正晴君から痲疹はしかを貰って死にかけたこと、村長さんの養魚池を荒して操行点が乙になったこと、峠の喧嘩で側杖を食って頭が瘤だらけになったことを持ち出した。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)