病牀びやうしやう)” の例文
子規ほど病牀びやうしやう生活で苦しまなかつただけ、呑気ではなく、鋭いところが未だ消えずにゐる。石川啄木たくぼくなどでもやはり同じ径路を取つてゐる。
結核症 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
墨汁一滴ぼくじふいつてき」や「病牀びやうしやう六尺」中に好箇の小品少からざるは既に人の知る所なるべし。就中なかんづく「病牀六尺」中の小提灯こぢやうちんの小品の如きは何度読み返してもかざる心ちす。
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
静かにこもつてゐたい赤彦君の病牀びやうしやうを邪魔したのさへ心苦しい。しかるに赤彦君は苦しいうちにかういふ心尽しをされるのであつた。僕等はかたじけなく馳走になつた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
七 然れども子規しきの生活力の横溢わういつせるには驚くべし。子規はその生涯の大半を病牀びやうしやうに暮らしたるにもかかはらず、新俳句を作り、新短歌を詠じ、更に又写生文の一道をもひらけり。
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『大敵』といふのは、赤彦君が静かに静かにこもつてゐたかつた病牀びやうしやうに、どやどやとつめかけた平福・岩波・中村・土屋・僕その他の友人、門人をつたのであつた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
三 「墨汁一滴ぼくじふいつてき」や「病牀びやうしやう六尺」に「脳病なうびやうを病み」云々うんぬんとあるは神経衰弱のことなるべし。僕は少時正岡子規まさをかしきは脳病などにかかりながら、なぜ俳句が作れたかと不思議に思ひし覚えあり。
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
香取かとり氏はかう病牀びやうしやうにある夏雄の心理を解釈した。わたしも恐らくさうだらうと思ふ。所がその或男に、この逸話を話して聞かせたら、それはさもあるべき事だと、即座に賛成の意を表した。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
墨汁一滴ぼくじふいつてき」だか「病牀びやうしやう六尺」だかどちらだかはつきり覚えてゐません。しかし子規しきはどちらかの中に夏目先生と散歩に出たら、先生の稲を知らないのに驚いたと云ふことを書いてゐます。
正岡子規 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)