異臭いしゅう)” の例文
異臭いしゅうに驚いて急止した馬は、もう一歩で屍骸を踏みつけるところまで接近していた。この発見の光景を、犯人はかたわらで見ていたのである。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
風が出てきて、余燼よじんがスーと横に長引くと、異臭いしゅうの籠った白い煙が、意地わるく避難民の行手をふさいで、その度に、彼等は、また毒瓦斯どくガスが来たのかと思って、狼狽ろうばいした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
火は消しもする、はらいもする、が、もうもうと間道かんどうのなかへこもりだした煙はおえぬ。しかも異臭いしゅうをふくんだ獣油の黒煙が、でどころがなく、うずをまいてふたりをつつんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
異臭いしゅうのよどんだなかで
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
それから異臭いしゅうを放つしわくちゃのハンカチーフ迄、すっかり卓子のうえに取出した。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
多年の直感が何か異臭いしゅうをそこにぎつけたものらしい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)