町奉行まちぶぎょう)” の例文
さて、……町奉行まちぶぎょう白洲しらすを立てて驚いた。召捕めしとつた屑屋を送るには、槍、鉄砲で列をなしたが、奉行役宅やくたく突放つっぱなすとひきがえるほどの働きもない男だ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それを護送するのは、京都町奉行まちぶぎょうの配下にいる同心どうしんで、この同心は罪人の親類の中で、おも立った一にんを大阪まで同船させることを許す慣例であった。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
細君の読み上げる文章は、まるで旧幕時代の町人が町奉行まちぶぎょうか何かへ出す訴状のように聞こえた。その口調に動かされた健三は、自然古風な自分の父を眼の前に髣髴ほうふつした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
町奉行まちぶぎょうが、いかに重大な事件だからといって、夜間やかん将軍と膝をつきあわせて話すということなどは絶対にない……ナンテことは言いッこなし。物には例外というものがある。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
天下の町人と云うかどで見附から町奉行まちぶぎょうへ引渡しになって、別にとがはないが、天下の飾り道具を持出した廉で吟味中入牢じゅろうを申し付けると云うので、暮の廿六日に牢ゆきになりました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
百姓の難渋を見ていることが出来ないというので、死を決して増上寺から不正の升をかすめて町奉行まちぶぎょうに告訴した、権之助のために増上寺の不法はめられたけれども、かれはそれがために罪に問われて
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)