生魚なまうお)” の例文
半七はそっと掃溜めをのぞいてみると、魚の骨はみな生魚なまうおであるらしかった。犬や猫がこんなに綺麗に生魚を食ってしまうのは珍らしい。
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何と生魚なまうおを、いきなり古新聞に引包ひッつつんだのを、爺様は汚れた風呂敷にいて、茣蓙ござの上へ、首に掛けて、てくりてくりとく。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母「喫べなせえヨウ、久右衞門きゅうえもんどんが、是なればかろうって水街道へ行って生魚なまうおを買って来たゞ、随分旨いもんふだんなら食べるだけれど、やア食えよウ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこで米一升に味淋二合の割で御飯を少しこわい目に炊いて、く冷まして前に煮た野菜類と混ぜて今の生魚なまうおの漬けてあった酢をかけてよく丁寧ていねいに掻き混ぜます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
生魚なまうおでも喰い裂くように、腐ったところを歯で食いちぎってみましたが、そんなことではだめだと知りましたので、鱶に腕を喰い切らせてやろうと思い、舷から肱を出して待っていますと
手紙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)