生濕なまじめ)” の例文
新字:生湿
そしてお玉の死骸の側に膝行ゐざり寄ると、そのこめかみのあたりへ左手を掛け、右手の生濕なまじめりの小菊を、死體の耳の穴へ、そつと差込むのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
持つてゐて、それに生濕なまじめりの土が附いてゐたから、金杉の竹松親分に縛られたのも無理はない。あの人は道樂がひどいから、五兩とまとまつた金を
念の爲にツイ傍の上便所の扉をあけると、二本燈心の薄明りで、——草履ざうりが一足。手に取り上げて裏返すと、生濕なまじめりの苔臭こけくさい土が一面に附いてゐるではありませんか。
「だがな八、敷居しきゐの穴を詰めた土は少し生濕なまじめりだし、雨戸の隙間すきまは、外からだつて拵へられるぜ」
さう言つて太吉が手拭に包んで居たのをほどいて、平次の前へ、生濕なまじめりの赤い首環を出しました。
新助はしをれ切つて、何時の間にやら、生濕なまじめりの土の上へ坐つて居りました。言ひ交したお駒を殺した激動に打ちのめされて、松五郎の憤怒などは、素より眼中にありません。
一人は外科へ、一人は町役人へ、一人は土藏の扉を開けて若旦那の染五郎を出す爲、左陣は生濕なまじめりの路地に足跡をつけるのを嫌つて、大廻りに店口の方から入つて來ました。
押入から布團を引出すと、中から、ポロポロと生濕なまじめりの土がこぼれ落ちるではありませんか。
水船から這ひ上がつて、半身ぐしよ濡れのまゝ縛られたのでせう、腰から下は生濕なまじめりのまゝ、折目も縫目ぬひめも崩れて、むしろの上にしよんぼり坐つたお蔦は、妙に平次の感傷をそゝります。
たつた一つの手燭てしよくで、平次は實によく調べて行きます。生濕なまじめりの庭にはあつらへたやうに足跡があつて、それがかなり大きいことや、突當りの木戸は外から簡單に輪鍵わかぎの外せることを見極め
左手には金次郎が居たといふ土藏へ通ずる生濕なまじめりの道があります。
「昨夜妹をおびき出した曲者は、長崎屋の庭で妹を殺害し塀越しに死骸を投げ込んだのだ。六尺の土塀の上に附いた血や、植込の躑躅つゝじの枝が折れて、生濕なまじめりの土に深く型の附いたのなどは、その證據だ」
源吉は生濕なまじめりの手拭をお吉の眼の前にヒラヒラさせました。