瓜実うりざね)” の例文
旧字:瓜實
瓜実うりざね顔、富士額、薄い受口、切長の眼、源女に相違ないのであった。ただ思いなしか一年前より、痩せておとろえているようであった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
腕組をして枕元にすわっていると、仰向あおむきに寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭りんかくやわらかな瓜実うりざねがおをその中に横たえている。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
旧領地佐賀野の零落れいらくした酒づくりの娘で、礼儀作法も心得、品もよく、その顔だちも瓜実うりざね型の淋しいところはあったが、ず何処と言って難のない美人といえる小娘であった。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
姉は、薄皮の瓜実うりざね顔に眉が濃く迫っている美人で、涙っぽいれ目は艶ではあるが、どんな笑い顔をも泣き笑いの表情にして、それで平生は無難なまとまった顔立ちでも単純だった。
呼ばれし乙女 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
母親そつくりの肌理きりのこまかい瓜実うりざね顔をして、少女のやうなぱつちりした眼をおどおどと伏眼にし、何かものを言ふときは女性の語尾を使つて、肩でしなを作りさへしたものだつた。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
然しいずれの世を通じましても、この瓜実うりざねというのが一番美人だろうと思います。
女の顔 (新字新仮名) / 上村松園(著)
眉は、鼻は、眼は——と言った、部分的に詮索立をするような顔ではなく、瓜実うりざね型になった細面の全部が、素晴らしい芸術品に見るような、魅力と完成美に輝やいて居ると言った方が宜いでしょう。
瓜実うりざね顔の富士額ふじびたひで、むかし風の美人だ。今時めづらしい。」
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
瓜実うりざねと、どちらを取りましょう。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)