玩具箱おもちゃばこ)” の例文
まるで百花撩乱のお花畑のような、ペンキ塗りの玩具箱おもちゃばこをひっくり返したような、青春の夢のように美しくも目を奪うものであった。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
茶屋の手すりに眺めていた海はどこか見知らぬ顔のように、珍らしいと同時に無気味ぶきみだった。——しかし干潟ひがたに立って見る海は大きい玩具箱おもちゃばこと同じことである。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いま水からあげたばかりのぬのを石にたたきつけたように、花と見える血沫ちしぶき四辺あたりに散って、パックリと口を開いた白い斬りあとから、土にまみれる臓腑ぞうふ玩具箱おもちゃばこをひっくりかえしたよう……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そうして懸物かけものの前にひと蹲踞うずくまって、黙然と時を過すのをたのしみとした。今でも玩具箱おもちゃばこ引繰ひっくり返したように色彩の乱調な芝居を見るよりも、自分の気に入った画に対している方がはるかに心持が好い。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしたちの玩具箱おもちゃばこには、いつも二つも三つもごろごろしていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)