猟夫かりうど)” の例文
旧字:獵夫
なれど「れぷろぼす」は、性得しやうとく心根こころねのやさしいものでおぢやれば、山ずまひのそま猟夫かりうどは元より、往来の旅人にも害を加へたと申す事はおりない。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おれは、今日限り、猟夫かりうどは止める。もう一生鉄砲はたない。信次、お前はその子猿を大事に飼つてやれ、俺はこの母猿を裏の墓場へ叮嚀ていねいにお葬式をしてやる!」
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
明治廿三にじゅうさん年の二月、父と共に信州軽井沢に宿やどる。昨日から降積ふりつむ雪で外へは出られぬ。日の暮れる頃に猟夫かりうどが来て、鹿の肉を買つてれと云ふ。退屈の折柄おりから、彼を炉辺ろへんに呼び入れて、種々いろいろの話をする。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
かへつてそまりあぐんだ樹は推し倒し、猟夫かりうどの追ひ失うた毛物けものはとつておさへ、旅人の負ひなやんだ荷は肩にかけて、なにかと親切をつくいたれば、遠近をちこちの山里でもこの山男を憎まうずものは
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
昔、紀州きしうの山奥に、与兵衛よへゑといふ正直な猟夫かりうどがありました。或日あるひの事いつものやうに鉄砲かたげて山を奥へ奥へと入つて行きましたがどうしたものか、其日そのひに限つてうさぎぴきにも出会ひませんでした。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)