猜疑うたがい)” の例文
「その猜疑うたがいことわりなれど、やつがれすでに罪を悔い、心を翻へせしからは、などて卑怯ひきょうなる挙動ふるまいをせんや。さるにても黄金ぬしは、怎麼いかにしてかくつつがなきぞ」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
夜昼となくその高殿から、嫉妬ねたみ猜疑うたがい呪咀のろいとをもって、妖精のように桂子が、自分たちを看視していることだろう。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし岸本は、節子と彼との年齢の相違から起って来る猜疑うたがい深い心までも彼女の前には隠すまいとした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
われに計略はかりごとあり、及ばぬまでも試み給はずや、およきつねたぬきたぐいは、その性質さがいたっ狡猾わるがしこく、猜疑うたがい深き獣なれば、なまじいにたくみたりとも、容易たやすく捕へ得つべうもあらねど。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)