犬牙けんが)” の例文
あるいはよし、しかることなきももし強大にしてかつ武備的の国とその境界犬牙けんが相接する場合においては我つねに戒厳するところあらざるべからず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ちょうど、胴と脚の附け根のような地形に、今川家の勢力は犬牙けんがのように深くい入って、沓掛くつかけ大高おおだかの二城をつなぎ、織田領の脚部をそこで切断した形になっていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その車は外を青「ペンキ」にて塗りたる木の箱にて、中に乗りし十二人の客はかたこし相触れて、膝は犬牙けんがのように交錯こうさくす。つくりつけの木の腰掛こしかけは、「フランケット」二枚敷きても膚を破らんとす。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
見れば、面はかにの如く、犬牙けんがは白く唇をかみ、髪髯はつぜん赤く巻きちぢれて、見るから怖ろしい相貌をしているが、平常はむッつりとあまりものをいわないたち文醜ぶんしゅうであった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)