物費ものいり)” の例文
「京都でもいろいろお物費ものいりが多いでしょうからね。それに元々こちらが悪いんですから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところがこの私も、病人やら物費ものいりやらで、このところ、どうしようもございません。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顳顬こめかみ即功紙そっこうし張りて茶碗酒引かける流儀は小唄こうたの一ツも知らねば出来ぬことなるべく、藁人形わらにんぎょうに釘打つうしときまいり白無垢しろむくの衣裳に三枚歯の足駄あしだなんぞ物費ものいりを惜しまぬ心掛すでに大時代おおじだいなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それに母様が厳しくしつければ、その方は心配はないが、むむ、まだ要点は財産だ。が、酒井は困っていやしないだろうか。誰も知った侠客きょうかく風の人間だから、人の世話をすりゃ、つい物費ものいりも少くない。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)