牝犬めすいぬ)” の例文
大きな尨犬むくいぬの「熊」は、としをとった牝犬めすいぬだったが、主人の命で、鋭く吠えたてたので流石さすがの腕白連も、ひとたまりもなく逃げてしまった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
そういう種類の女は牝犬めすいぬに等しいものであって、よからぬ犬にたいしては、ただ一つの良薬すなわちむちがあるばかりであると。
「勘や見当で下手人を決められてたまるものか。——それより、主人の寅五郎が殺される前に、牝犬めすいぬが一匹死んだはずだ。それはどうしたんだ」
元来ポチを牝犬めすいぬと承知で貰って来た時、細君は無論反対した。しかし犬も人間も同じに思っている千吉君はこの頃の文化婦人は然う子を生まないと主張した。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
人々が憂いや怒りをふくむ所以ゆえんは、この太郎と呼ぶ番犬は、今は江戸表にある主人の但馬守宗矩むねのりが、ひどく可愛がっていた犬でもあり、殊に、紀州頼宣公が愛している雷鼓らいこという牝犬めすいぬの児を
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牝犬めすいぬの死んだ前の日、変な奴がウロウロしていたそうですよ。小僧や小女が追っ払っても、頬冠ほおかむりも取らずに何かブツブツ言っていたが、主人の顔を見ると、さすがに驚いて逃げ出したそうで」
牝犬めすいぬの死んだ前の日、變な奴がウロウロして居たさうですよ。小僧や小女が追つ拂つても、頬冠ほゝかぶりも取らずに何にかブツブツ言つて居たが、主人の顏を見ると、さすがに驚いて逃げ出したさうで」