)” の例文
七つ八つの泡によって鍋底から浮上り漂う銀杏形いちょうがたれの中で、ほど良しと思うものを彼ははしで選み上げた。手塩皿の溜醤油たまりに片れの一角を浸し熱さを吹いては喰べた。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
床の中で、ボロれのやうに小さくなつて居た父親——榮左衞門は、向うを向いたまゝ、かすかにうなづいたやうでもありますが、それは平次にも確としたことは言へなかつたのです。
子供等は持つて帰つた林檎をおいしさうに食べるのであつたが、私は一れも食べる気がしなかつた。夕飯ゆふはんの時に阪本さんが来た。留守の間に浅草の川上さんのお使つかひが見えたさうである。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
有り合わせの紙っれに、これから山に這入る、無理には冒さないが、危険に出っかすかも知れない、死んだら何分よろしくと、日本山岳会と、宅のものと、国にいる二人の親友に書き置きをした。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)