片肘かたひぢ)” の例文
お銀ちやんは、ちやぶ臺の上へぐたりと片肘かたひぢをつき、その上へ、平つたい濁つた顏を載せて、おきみと周三を代る/″\ヂロ/\と見守つてから
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
富岡は壁にもたれて、長い膝小僧を抱いた。ゆき子は蒲団に片肘かたひぢついて横坐りになると、ジャケツの胸の上から大きなまるい乳房を、たゝくやうにしていてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
彼は心の中でかう叫びながら、忌々いまいましさうに原稿を向うへつきやると、片肘かたひぢついてごろりと横になつた。が、それでもまだ気になるのか、眼は机の上を離れない。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
水のない溝のなかに片肘かたひぢついて轉げた子供の瞳は、それでもなほお葉の體から離れなかつたのである。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
梅子は机に片肘かたひぢもたせしまゝ、ひもとける書上に、空しく視線を落とせるのみ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
富岡は、炬燵こたつ腹這はらばつて、昨日の新聞をもう一度くり返して読んでゐたが、「おい……」と、思ひ詰めたやうに、くるりと、畳に片肘かたひぢ突いて、ゆき子の顔を、下から見上げた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
側なる小卓に片肘かたひぢを立てて、悩まし気にかしらさゝへぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)