燎火にわび)” の例文
また城内には燎火にわびさかんに焼かせるがよい。——ただし防禦は厳に、部署は整然と、鳴りをしずめ、敵の懸りようを見まもっておれ
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今この近郷六月朔日に燎火にわびを焼くはその時の名残である云々(新編武蔵風土記稿百九十一)。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
禰宜ねぎ(神職)の振る鈴の、かすかな燎火にわび、そして拍手かしわでのひびきなど、遠くの兵たちにもあわくわかった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう今夜は門に燎火にわびかないが、三日のあいだは何のかのと内輪の式事や客往来の慣わしがあり、こよいも奥は訪客の声に満ち、玄関には履物はきものの数が多く見える。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元成は、見よう見真似のそれを、即興に演じたまでのことだッたが、彼の異彩は、はしなく、燎火にわびの明るさをも増すばかりな喝采をはくし、人々の賞讃はしばし鳴りやまなかった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燎火にわびかがりの光が低い雨雲にうつって、真っ黒な天地の中に、そこばかりがぼうと美しい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花嫁が輿へかくれてからも、夕篝ゆうかがりの明りの中に、おびただしい花嫁の荷と、人馬との混雑は、容易に列がそろわなかった。そして時折、夜に入って一しお肌寒い時雨しぐれが、松明たいまつ燎火にわびの焔をうごかした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
満山の木々も染まるほど、やかた燎火にわびは燃えていた。——祝歌はながれて行く——町の民家も軒端軒端に、かがりをたいていた。祝歌につづく人馬や揺れかがやく輿のおおいは、その美しい焔の中を流れて行った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のみならず、夜の燎火にわびをめぐる酒宴では、成輔の名ざしで
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)