焼木杭やけぼっくい)” の例文
担当の警官が飛んできて、焼木杭やけぼっくいを掻きのけ、燃え残った外側の落し戸を壊して地下室をのぞきこんでいたが
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
掻き散らされた焼木杭やけぼっくいに水をかけたように、いつとはなしに愉快な音色はその静寂のうちに消えてしまった。
相手が上手うわてだったからかなわない、一応は降参して、向後きょうこう然様さようなところへはまいりませぬと謝罪して済んだが、そこには又あやしきは男女の縁で、焼木杭やけぼっくいは火の着くことはや
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今まで深く茂った大きな常磐木ときわぎの森の間に、王宮と向い合って立っていた紅木大臣の邸宅やしき住居すまいも床も立ち樹もすっかり黒焦くろこげになってしまって、数限りなく立ち並んだ焼木杭やけぼっくいの間から
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ただこの問題の決定に必要な十分な海洋観測の材料がないために問題はそのままに問題として残され、やがていつとなく忘れられていた。それが今年の凶作で急に焼木杭やけぼっくいに火がついた形である。
新春偶語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
鳥はまたたく間に、かの女の視線をって近くの小森に隠れて行った。残されたかの女の視線は、墓地に隣接するS病院の焼跡やけあとに落ちた。十年も前の焼跡だ。焼木杭やけぼっくいや焼灰等はちり程も残っていない。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
猟師は、焼木杭やけぼっくい烟管キセルをコツコツ叩きながら
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)