“焼刃(やきば)” の例文
旧字:燒刃
しかも、この焼刃(やきば)の中には、母の真心(まごころ)さえこもって居た。兄弟ふたりが、一心不乱になっていると、母は絶えず、仕事場へ宥(いた)わりに来て
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
短刀はかなり業物(わざもの)らしく、焼刃(やきば)の色も見事ですが、畳の上へ一寸ばかり突っ立っているのと、刃に血の跡もないのが不思議です。尤(もっと)も鞘(さや)もすぐ傍に転(ころ)がっております。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
まるで磨ぎすました焼刃(やきば)の匀(にお)いを嗅ぐような、身にしみてひやりとする、と同時にまた何となく頼もしい、妙な心もちが致した事は、先刻もう御耳に入れて置きました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし日本人も、決してそういう悪い点だけをもっている人種ではない。唯(ただ)この二、三十年来、日本人は付け焼刃(やきば)の西洋文明を、自分らの特質と思いちがえていたようである。
日本のこころ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
附(つ)け焼刃(やきば)もあるが、元来器用人の上に義太夫語りだから真に迫る。科白もよく覚えた。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「薩州鍛冶(かじ)の焼刃(やきば)をお目にかけようか」
長政どの以下、各〻の覚悟とやらは、附(つ)け焼刃(やきば)のいつわりか。虚勢かッ。臆病ものの強がりか
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少しも取乱した御容子(ごようす)を御見せにならず、ただ、青ざめた御顔を曇らせながら、じっと大殿様の御枕元へ坐っていらしった事を考えると、なぜかまるで磨(と)ぎすました焼刃(やきば)の匀(にお)いでも嗅(か)ぐような
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうした彼の思想は父信秀の代からのもので政略や付(つ)け焼刃(やきば)ではないようだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)