無辺際むへんざい)” の例文
むしろ行住座臥ぎょうじゅうざがが念仏の中に在るともいうべきで、百万遍ひゃくまんべんはおろか、無辺際むへんざいの念仏であります。しかしそれは数のことではなく、ただの繰返しではありません。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しかしその古ピアノは、いかに古くいかに不具であろうとも、クリストフにとっては最良の友であった。それは音楽の無辺際むへんざいな世界を子供に開き示してくれた。
そしてかれがまなざしを、無辺際むへんざいの境からたぐりよせて集中したとき、それは左手からきかかって、かれの前の砂地を通りすぎる、あの美しい少年なのであった。
それでも、縹渺ひょうびょう無辺際むへんざいに広がっている海を、未練にももう一度見直さずにはいられなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
蒼白あおじろ面高おもだかけずせる彼の顔と、無辺際むへんざいに浮き出す薄き雲の翛然ゆうぜんと消えて入る大いなる天上界てんじょうかいの間には、一塵の眼をさえぎるものもない。反吐は地面の上へ吐くものである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
無窮に無辺際むへんざいに円く円く遥かに。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
無辺際むへんざいの空間には、地球より大きな火事がところどころにあって、その火事の報知が吾々われわれの眼に伝わるには、百年もかかるんだからなあと云って、神田の火事を馬鹿にした男である。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
帆がすべ無窮むきうに、無辺際むへんざいに。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)