きよ)” の例文
熟さず、諸州の同心と往来の秘状のみ、今は、あだとなつてここに積まる。むなしき弓箭、またすべて、一きよの灰となされん。乞ふ、家時が亡骸なきがらも、その火に附せよ。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
民衆は皆肩をそびやかし、眉をあげて、北天を望めり。見よ、七星の光肥えてきよの如からずや。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
我国の木屋もくをくは一きよにして焚き尽され、唯空地を遺すのみである。頃日このごろ所々に木札をてて故跡を標示することが行はれてゐるが、松崎慊堂かうだうの宅址の如きは未だ其数に入らない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)