灸所きゅうしょ)” の例文
もちろん、先輩せんぱいが同じような仕事をしているので、新顔に灸所きゅうしょ灸所は教えてくれるのであるが、そのせいばかりとは思われない。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
不意に推掛おしかけたる此問に倉子の驚きたる様は実にたとうるに物も無し、余は疑いも無くれの備えの最も弱き所をきたり、灸所きゅうしょとはかゝるをや云うならん
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
灸所きゅうしょの痛手に金眸は、一声おうと叫びつつ、あえなくむくろは倒れしが。これに心の張り弓も、一度に弛みて両犬は、左右にどう俯伏ひれふして、霎時しばしは起きも得ざりけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
灸所きゅうしょを刺せば、猛獣は叫ぶ。わが非を知れば、人は怒る。武男が母は、これがためにおさえ難き怒りはなおさらにもんを加えて、いよいよ武男の怒るべく、浪子のにくむべきを覚えしなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そういえば山門を向き合って双方、名灸所きゅうしょと札をかけている寺など何となく古雅なものに見られるような気がして来た私は、気をかして距離を縮めてゆるゆる走って呉れる俥の上からく。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その生活様式の中で一番の灸所きゅうしょは畳である。満洲くらいの厳寒地で畳の生活をするのは、何といっても無理があるようである。
満洲通信 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)