潤沢うるおい)” の例文
旧字:潤澤
粗食する人の皮膚は枯れてポソポソしているように見えますし、衛生的の食事をしている人は誰が見ても沢々つやつやして潤沢うるおいが多いようです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
帰郷前よりも一層潤沢うるおいをもって来たお今の目などの、浅井に対する物思わしげな表情を、お増は見遁みのがすことができなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そうして皮膚の青白いせいか、その髪の色が日光に照らされると、潤沢うるおいの多いむらさきを含んでぴかぴかちぢれ上っていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
潤沢うるおい緊張しまりもないお銀の顔色は、冬になると、少しずつ、見直して来たが、お産をするごとに失われて行く、肉の軟かみと血の美しさは恢復とりかえせそうもなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それもその十円が物質上私の生活に非常な潤沢うるおいを与えるなら、またほかの意味からこの問題を眺める事もできるでしょうが、現に私はそれをひとにやろうとまで思ったのだから。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それさえ彼は懐都合ふところつごうで見合せなければならなかったのである。まして京都から多少の融通をあおいで、彼らの経済に幾分の潤沢うるおいをつけてやろうなどという親切気はてんで起らなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
切れ長な大きいその目が、みずみずした潤沢うるおいをもっていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
唇の薄い割に口の大きいのをその特徴の一つとして彼は最初からながめていたが、美くしい歯をき出しに現わして、潤沢うるおいゆたかな黒い大きな眼を、上下うえしたまつげの触れ合うほど、共に寄せた時は
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)