漢子おとこ)” の例文
かつて酒量少なく言葉少なかりし十蔵は海と空との世界に呼吸する一年余りにてよく飲みよく語り高く笑いこぶしもて卓をたたき鼻歌うたいつつ足尖つまさきもて拍子取る漢子おとこと変わりぬ。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
胴づまりで肥った漢子おとこの、みじめなのが抜衣紋ぬきえもんになって、路地口の肴屋さかなやで、自分の見立てで、そのまぐろを刺身に、とあつらえ、塩鮭の切身を竹の皮でぶら下げてくれた厚情こころざしあだにしては済まないが
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
するとすぐ僕の耳に入ったのは琵琶びわであった。そこの店先に一人の琵琶僧が立っていた。としのころ四十を五ツ六ツも越えたらしく、幅の広い四角な顔のたけの低い肥えた漢子おとこであった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)