“湊(あつ)” の例文
この立ち廻りの最中に、雨は又台所の屋根へ、凄(すさ)まじい音を湊(あつ)め出した。光も雨音の高まるのと一しよに、見る見る薄暗さを加へて行つた。
お富の貞操 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
心のうち一二〇いかばかり清(すず)しからんとはうらやみぬるぞ。かくいへど富貴のみちは術(わざ)にして、一二一巧(たくみ)なるものはよく湊(あつ)め、不肖(せう)のものは瓦の解くるより易(やす)し。
腹立つ者、無理言う者、呟く者、罵(ののし)る者、迷惑せる者、乗り合いの不平は奴の一身に湊(あつ)まれり。渠はさんざんに苛(さいな)まれてついに涙ぐみ、身の措(お)き所に窮して、辛くも車の後(あと)に竦(すく)みたりき。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五體にみなぎる精力(せいりき)が、兩の腕(かひな)におのづから湊(あつ)まる時、わがたましひは流るゝ如く彼に通ひて、はじめて面も作られまする。但しその時は半月の後か、一月の後か、あるひは一年二年の後か。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
五体にみなぎる精力(せいりき)が、両の腕(かいな)におのずから湊(あつ)まる時、わがたましいは流るるごとく彼に通いて、はじめて面も作られまする。ただしその時は半月の後か、一月の後か、あるいは一年二年の後か。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)