みぞ)” の例文
地の上の足もとを見ると、彼の足場である土橋の下を、みぞの水が夕映の空を反映して太い朱線になつて光り、流れて居た。
そこで、与八の仕事場が、同時に学校になって行くのも、水いたってみぞの成るが如く、極めて自然なものでありました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしてかの骸骨を手に取ると、今までに気づかなかった不思議なことが眼に止まった。それは骸骨の後頭部の下の方に、広く、嶮しいみぞのついていることであった。
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
その上には一鳥の足を留むるなく、一莖の草の萌え出づるなし。沼澤の中に、深きみぞを穿ちて、杭を立て泥を支ふるあり。是れ舟をる道なり。われは始て「ゴンドラ」といふ小舟を見き。
決して再び溶けないほどな、対立的なみぞを深めて来つつあることはいなみ難い。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時計の音をとめると、今度は庭の前を流れるみぞのせせらぎが、彼には気になり初めた。さうして今度はそれが彼の就眠を妨げるやうに感じられた。
それから、彼はそのついでにあのみぞの上へ冠さつて居る猫楊ねこやなぎの枝ぶりをつくろうても見た。その夕方、彼は珍らしく大食した。夜は夜で快い熟睡をむさぼり得た。