浸々しみじみ)” の例文
いや、お気にさはりましたらおゆるし下さいまし。貴方とは従来これまで浸々しみじみお話を致した事もございませんで私といふ者はどんな人物であるか、御承知はございますまい。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
アノ約束の辛い事が今更のように浸々しみじみと身にこたえたけれども仕方がない
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
たとい唐の毗陵びりょう堪然たんねん輔行弘決ぶぎょうぐけつを未だ寂心が手にし得無かったにせよ、寂心も既に半生を文字の中に暮して、経論の香気も身に浸々しみじみと味わっているのであるから、止観の文の読取れぬわけは無い。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
つい心易立こころやすだてから、浸々しみじみお礼も言はずにゐたけれど、狭山さん、私の心は、さうだつたの。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
奉公大事ゆゑにうらみを結びて、憂き目にひし貫一は、夫のわざはひを転じて身のあだとせし可憫あはれさを、日頃の手柄に増して浸々しみじみ難有ありがたく、かれをおもひ、これを思ひて、したたかに心弱くのみ成行くほどに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)