汪々おうおう)” の例文
改築中で割栗石わりぐりいし狼藉ろうぜきとした停車場を出て、茶店さてんで人を雇うて、鶴子と手荷物をわせ、急勾配きゅうこうばいの崖を川へ下りた。暗緑色あんりょくしょくの石狩川が汪々おうおうと流れて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その水の汪々おうおうと流れる涯には、ヘルンの夢みた蓬莱ほうらいのように懐しい日本の島山がある。ああ、日本へ帰りたい。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
するとは如何に、眼の前は茫々漠々ぼうぼうばくばくとして何一ツ見えず、イヤ何一ツ見えないのでは無い、唯是れ漫々洋々として、大河だいがの如く大湖の如く大海だいかいの如く、漪々いいたり瀲々れんれんたり、汪々おうおうたり滔々とうとうたり
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かけひの水音を枕に聞く山家やまがの住居。山雨常に来るかと疑う渓声けいせいうち。平時は汪々おうおうとして声なく音なく、一たび怒る時万雷の崩るゝ如き大河のほとり。裏にを飼い門に舟をつなぐ江湖の住居。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
池田駅は網走線の分岐点ぶんぎてん、球燈、国旗、満頭飾まんとうしょくをした機関車なども見えて、真黒な人だかりだ。汽車はこゝで乗客の大部分を下ろし、汪々おうおうたる十勝川の流れにしばらくは添うて東へ走った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)