汚苦むさくる)” の例文
一同がぞろぞろそろって道幅の六尺ばかりな汚苦むさくるしい漁村に這入はいると、一種不快なにおいがみんなの鼻をった。高木は隠袋ポッケットから白い手巾ハンケチを出して短かい髭の上をおおった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人のような汚苦むさくるしい男にこのくらいな影響を与えるなら吾輩にはもう少し利目ききめがあるに相違ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが幾日いくかとなく洗いもくしけずりもしない髪が、あぶらあかで余の頭をうずくそうとする汚苦むさくるしさにえられなくなって、ある日床屋を呼んで、不充分ながら寝たまま頭に手を入れて顔に髪剃かみそりを当てた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)