水瀬みなせ)” の例文
梶原かじわら申しけるは、一歳ひととせ百日ひゃくにちひでりそうらひけるに、賀茂川かもがわ桂川かつらがわ水瀬みなせ切れて流れず、筒井つついの水も絶えて、国土こくどの悩みにて候ひけるに、——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鏡の前から振り顧って、後ろに、手をつかえた老女の水瀬みなせを見た御方の顔は、もうあけぼのの花が露を払ったような身じまいを済ましておられた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見知らぬくに音信おとづれの様に、北上川の水瀬みなせの音が、そのシツトリとした空気を顫はせる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
河原の水瀬みなせに、彼は、一そうの小舟を見つけた。も付いているし、恰好な乗物と思ったのであろう。それへ乗って、繋いでいる綱を解きかけるのであった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鎌倉殿ことごとしや、何処いずこにて舞いて日本一とは申しけるぞ。梶原申しけるは、一歳ひととせ百日のひでりの候いけるに、賀茂川かもがわ桂川かつらがわ水瀬みなせ切れて流れず、筒井の水も絶えて、国土の悩みにて候いけるに、——
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老女の水瀬みなせがいつの間にかそこへ来て微笑していた。解きがたい謎に迷っている新九郎ははっとして
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水瀬みなせことばから察するに、どうやら寮のうちに、誰か寝ている病人があるらしい。けれど、医師の蘚伯せんぱくがよいと云ったのを、御方は何故か、不足らしい色を見せて聞いたのであった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)