水槽みづぶね)” の例文
おのれはかゝる水槽みづぶねの中におつ、さればわが後方うしろに冬を送る魂もおもふにいまなほそのからだを上の世にあらはすなるべし 一三三—一三五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
外には、湯気の間に窓の青空が見え、その青空には暖く日を浴びた柿が見える。馬琴は水槽みづぶねの前へ来て、心静に上り湯を使つた。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
中は五六十坪、筵張りの見世物にしては廣い方ですが、その眞ん中に、十坪あまりの眞四角な水槽みづぶねを据ゑて、少し不透明な水が滿々と湛へてあります。
水槽みづぶねの水に先を争うて首を突き出す牧場の仔馬こうまのやうでもあつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
風呂の中で歌祭文うたざいもんを唄つてゐるかかあたばね、上り場で手拭をしぼつてゐるちよんまげ本多ほんだ文身ほりものの背中を流させてゐる丸額まるびたひ大銀杏おほいてふ、さつきから顔ばかり洗つてゐる由兵衛奴よしべゑやつこ水槽みづぶねの前に腰を据ゑて
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
お村は水槽みづぶねから這ひ上がると、裸體のまゝで眼を廻したのですから、そんな物を持つてゐなかつたことは明かで、水槽はその日のうちに血潮の交つた水を流して、鹽磨きにして洗ひ清めたのですから