水柄杓みずびしゃく)” の例文
そして婆を追ッかけようとした命松丸は、釜屋の土間の入口で、内からバッと水柄杓みずびしゃくか何かでしたたかに、水をぶッかけられていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるものは船板を、あるものは水柄杓みずびしゃくを、あるものは長いたわしの柄を、何ものにも換えがたい武器のようにしっかり握っていた。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
と、伴天連と半助は、こう会釈えしゃくをして、すぐに刑吏けいりへさしずして、死座しざをつくらせ、だまりのあなをほらせ、水柄杓みずびしゃくをはこばせる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、一同があぶながるのを睨んで、湯わかし場の手桶へすがりつき、水柄杓みずびしゃくからガブガブと。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その顔へ、ざっと、水の入っている水柄杓みずびしゃくを投げつけた者がある、お通だった、風の中の鳥のように、途端に、袂もすそひるがえして、茶屋前の坂道を、真っ逆さまに、逃げ走って行く——
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とお吉が、つとめて、冗談に話しかけると、お米は手桶の中から水柄杓みずびしゃくを取って
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
具足をつけたままの小者が、手桶と水柄杓みずびしゃくを持って、庭へ水を打っていた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魚住十介は、水柄杓みずびしゃくへ一すくい汲んで渡しながら
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)